イングマール・ベルイマン

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カーリン?そこにいるの、カーリン?いるのね、かわいい私の娘、あなたに話したいことがあるの。とても大切な事よ。私の人生はなんてめちゃくちゃな、不完全な、気の滅入る、不十分で、不適切で、とうに失われた、不自然なものなんだろう、とかねてから思っていたところへ昨日アグネスが、私の息はニシンと酢漬けキャベツの酷い臭いがするからもうちょっとこまめに歯ミガキしたほうがいいって言うの。本当にうんざりよ、カーリン。完璧に鬱だわ。それがあなたをここへ呼んだ理由よ。ねえカーリン、ひょっとしてあなた、スウェーデンの映画監督イングマール・ベルイマン(Ingmar Bergman, 1918年 - 2007年)の映画が好きだったりしないかしら?

イングマール・ベルイマン

全然?まあいいわ、これから彼について話すことが私には重要なの。やめて、行かないで。せめてちょっとだけでも話させて。お願いよカーリン。私はかわいそうな鬱病のスウェーデンのおばあちゃんなのよ。長ったらしい実存主義的モノローグがなにより好きなの。どうカーリン、彼の名前、いかにも巨匠っぽい響きじゃない?すごく人気があって、マニアもいるような。どうかしらカーリン、ねえ!?言ってよカーリン!ああ神様、お願いだからそう言って!

――絶対イヤ。

私生活[編集]

ベルイマンお気に入りのセクシー女優のひとりであるマックス・フォン・シドー。

あなたのお父さんはね、

――ちょっと待って彼が私の父お……

シッ、ダメよ、話を遮っては!そこはどうでもいいんだから。スウェーデンのどこかにうじゃうじゃ漂ってるあなたの腹違いの兄弟のことだったら十数人はいるからあとで誰か一人に訊けばいいじゃない。

とにかく。イングマールはスウェーデンの敬虔な家庭に生まれたの。彼はそれにとても憤ったの、カーリン、私の言葉にも怒りがこもっているのが分かって?大人になると彼は、それまで親たちに吹き込まれてきたこと全てを覆そうと意識的な努力を重ねた。二つの方法でね。ひとつは、神自身さえ涙するような一連のどうしようもなく憂鬱な映画を作ること、もうひとつは、彼の法律が許す限りなるべく多くの女優たちとヤりまくることよ。リヴ・ウルマンはかなり悦んでいたわね、あなたのお父さんにも、その他の男たちにも。でもビビ・アンデショーンはかなり嫌がっていたわ、みんな知っていたことだけれど。あなたも見たわね、あれはたしか、

――ねえそんなやつがほんとに私の……

黙って、カーリン。これ以上許さないわよ。私は死の床にあるスウェーデンの萎びたババアなんですからね。

――死ぬの!?

いいのよカーリン、それもどうでもいいことだわ。大事なのは、あなたが私にこの実存主義的モノローグを最後まで完璧に続けさせてくれることなのよ。

キャリア[編集]

あなたのお父さんは、二つの試みをかなり成功させた。

――ねえそれより他にもっと話すべきことが……

カーリンお願いよ、私の可愛い娘。体力がもうもたないわ。私は死ぬのよ、結局のところ。

――その話こそもっとすべきじゃないの。

またやったわねカーリン、黙っていてほしいだけなのに。『沈黙』よ。ああカーリン、『冬の光』とか『鏡の中にある如く』とか見たことある?

――何それ?

お黙り、カーリン!

モチーフ[編集]

魅力的なスウェーデンの女優の他にも、あなたのお父さんが好きだったことは幾つかあったわ。

――……

黙って、カーリン!

――私なにも喋ってないじゃない!

黙れって言ったの!

憂鬱な実存主義的モノローグ[編集]

イングマールは、憂鬱な実存主義的モノローグを好む監督として有名なはずよ。実際に彼は鬱で、周りにいたみんなにもそれが感染した。私が彼と暮らしたのは4ヶ月足らずだったけれど、このうえなく気が滅入るモノローグを垂れないと一時間ともたない体になってしまった。カーリン、あなたの顔を見ると彼を思い出すわ、なぜだか分かる?私があなたを見るとき、私はあなたの両目に映し出された彼を見るの。寒々しい、ストイックなまなざし。カーリン、近くへ来て、もっと傍へ。ああ、カーリン!

神の存在と性質[編集]

神に関する問いも、あなたのお父さんの大好きなものだった。彼は8歳までに信仰を捨てていたけれど、そのことを把握するのに大人になってからの人生の大部分を費やしたの。有名になってもなお続けた。事実、彼のすべての監督作からは、彼が少なくともこんな問いに取り憑かれていたのが伝わってくる。神は愛を示してくださるのか、それともただ静かに見ておられるのか?そして静かに見ているのだとしたら、その沈黙はすなわち無関心ではないのか?ああカーリン、どうしてこんな問いにそこまで一生懸命になれたの、彼は?

ハイコントラストの照明と頻繁かつ緻密なショットによる構成[編集]

戯れの一例。あしゅら男爵。

カーリン、かわいい子、イングマールの映画には視覚的な特徴もあるのよ。彼はの極値を作り出すことに熱心で、機材は限られていたけれどそれを最大限に活用した。あなたも見たことがあるでしょう、カーリン!彼が光と影と戯れるやり方ったら!それは美しかったんだから、本当に。

性的体験の埋め合わせ[編集]

イングマールが好きだったものはまだあるわ。

彼の映画にはよく奇妙な性的含意があった。近親相姦少年愛、さまざまのフェティシズム、欲求不満、あなたのお父さんのテーブルの上には全部揃ってたわ。映画に登場する女性は、美しくて倒錯した性欲にとくに敏感だった。カーリン、いい子ね、もっと近くに来て。私のかわいいかわいい子。あなたの瞳は本当にお父さんそっくり。冷たくて、ストイックで、悲しげで、不動の瞳。お願いよカーリン、私の傍に来て。カーリン、おいで……

――お母様、私………………くっっせえ!!

カーリンは母親を突き飛ばして逃げ、自室にこもってベッドに突っ伏し数時間にわたって泣き叫んだあと、オナニーして、フィルムカメラで撮られたいと渇望してさらに泣き喚いた。そして我に返り、死んだ母親がナイトテーブルの上に残したメモに気づいた。ベルイマンが関わった膨大な作品のリストで、末尾に「追伸、沈黙を大事にね❤」とあった。カーリンはメモをアンティークの灰皿の上でゆっくりと燃やし、女たちの叫びとささやきはここでようやく絶えた。

この記事は、en:Ingmar Bergmanから翻訳されたものです。
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