ハルキゲニア

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ハルキゲニア(学名:Hallucigenia)は、カンブリア期(約5億4200万年前から約4億8830万年前)のにいた、最大で3センチくらいのちいさな生き物。

――お前はずっと昔に死んだはずだ。僕はお前が最後の息をひきとるのをきちんと見届けてから、土におそろしく深い穴を掘り、そこにお前を埋めた。そして作業靴の底で地面をしっかりと踏んで固めた。しかし×××年の歳月の後に、***は蘇った。まるで食屍鬼のように***は墓を押し開け、闇とともにその姿を僕の前に現した。(とある古文書より引用)


発見[編集]

バージェス頁岩中のきわめて状態の良い甲殻類の標本の例

1909年8月31日、アメリカ人古生物学者チャールズ・ウォルコットはカナダロッキー山脈内のスティーブン山での採掘に区切りをつけ、妻とともに戻る途中だった。思ったほどの成果は出ず、凸凹道をの背に揺られ、夫婦の不快感は頂点に達していた。夫人はよくしゃべった。「まったく、飽きもせず変な虫の化石ばっかり採って」「帰国したら新しいサマードレスを買うわ」夫人がそう言った瞬間、馬がこけて、彼女は地べたに転げ落ちた。ウォルコットはひらりと馬から飛び降り、とどめをさそうと妻の頭めがけてハンマーを振り下ろした。夫人がとっさに首をすくめたのでハンマーは地面を砕いた。ウォルコットはその断面に、見たことのない生物のきわめて鮮明な痕跡を認めた。このようにして彼はバージェス頁岩を発見した。

ハルキゲニアと後に呼ばれることになるこの生き物を、バージェス頁岩の中から初めて見いだした時、ウォルコットはこれを蠕虫(ミミズヒルの仲間)と判断した。彼が以前命名したトゲだらけの虫、カナディア・スピノサに姿が似ていて、しかしトゲの生え方がまばら(7、8本しかない)なので「カナディア・スパルサ(sparsa=ラテン語:まばらな)」と名付けた。その当時としては妥当な推測だったが、死後、1977年になってケンブリッジ大学の蠕虫オタク専門家、サイモン・コンウェイ・モリスによって「蠕虫とは別物」という新たな説が出された。モリスはその時点で最も状態の良い標本を詳細に調べて復元図を作製した。

人の耳がついてる

でかい頭、高く上がった尾部。腹から突き出した2列のトゲで竹馬みたいに海底をコツコツ歩き、背中に一列に並んだ触手を伸ばして食べ物を探す生き物。この姿がモリスとその仲間たちには幻想的に見えたので、彼らはこの不気味な生物に「ハルキゲニア・スパルサ(Hallucigenia sparsa)」と名付けた。みんなH・R・ギーガーのファンだった。あまりにありえそうにない形なので、もっと大きな生物の肢かなんかではないか、という声もあったが、それはすぐに否定された。バージェス頁岩中から、18匹の全く同じ形の生物が群がっている化石が発見されたのである。みんな、でっかい頭とトゲとやわらかい触手みたいなのがついていた。そして彼らの中心には、他の生物の大きな肉片があった。ハルキゲニアが腐りきった他の生物の死体を好んで食べることが分かり、世界中の古生物学者たちは胸を高鳴らせた。みんなこぞって地層を穿ち、屍肉を食らうエイリアンの死体を探した。

どんでん返し[編集]

鬱血したみたいな色になっているのはなぜなんだろう。

さらなる進展があったのは1984年、中国雲南省の澄江からハルキゲニアの近縁種の化石がいくつも見つかった。中国のホウとスウェーデンのラムショルドにより、「ハルキゲニア・フォルティス(fortis:強い)」と命名されたこの種の標本には、触手が2列あった。1列だけより2列あるほうが強そうだから増やしたわけではないし、ドクター・ホウの両腕はメカではない。弱いほうの虫ハルキゲニア・スピノサの標本は再検討され、強虫と同じように2列のやわらかい触手をもっていただけでなく、そもそも触手は爪がついた肢で、上下が逆だったらしいという結論が出た。

こうしてハルキゲニアは上下ひっくり返され、ついでに人間のみたいだった頭がなんだか卑猥な形状にリニューアルされた。7対のやわらかい肢で海底を静かに歩き、大きな敵を恐れて背中のトゲを逆立たせ、彼らが死ぬとその腐った肉を喜んで貪る、3センチくらいの小さな虫。

さらなるどんでん返し[編集]

2015年、ハルキゲニアはまたひっくり返される。ケンブリッジ大学の研究チームがハルキゲニアの肛門を電子顕微鏡で覗いたら、肛門の周りに歯がびっしり生えていたのである。さらによく見ると小さな目もふたつあった。今まで尻だと思っていたのは、顎のない頭だったのである。「今まで頭だとされていた楕円形の大きな塊は、泥に押し潰されたときにはみだしたウンコでした」と、ケンブリッジ大学のマーティン・スミスは発表した。バージェス頁岩にあった18匹全部が、死ぬ間際にウンコを漏らしていたのだ。大きな楕円形の頭を持つハルキゲニアのぬいぐるみなどのグッズを売っていた博物館や雑貨屋、ネットショップ、ヴィレッジヴァンガードなどは一日にして阿鼻叫喚の巷と化した。目立つから頭にふさわしいと思って選んだら実はウンコだった、ということは我々人間の社会においてもよくあることだが、3センチの虫にこれだけ長いこと騙されていたと思うと屈辱的である。

現存する種の一例、ネコ

こうしてハルキゲニアの向きは逆になったが、この復元図はわざわざ貼るまでもない。カギムシ、歯間ブラシ、ネコなどの現存する生物を見れば、それらの祖先がハルキゲニアであることは一目瞭然だからだ。

現在の復元図は、想像のしやすさもあって、今のところ正確なように見える。しかし油断してはならない。どこかに見落としが見つかる可能性は今後もある。そもそも、頭がついている方向に進むとは限らない。人間だって気付かないうちに後ろ向きに歩いていることがあるのだ。いわんや虫をや。

関連項目[編集]

Wikipedia
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