推敲
推敲(すいこう)とは、目上の人間の威を恐れて、書いた文章等を書き換えることである。
由来[編集]
唐の詩人、賈島は、いつもロバの上に乗りながら詩を考えていた。あるとき、彼は詩の構想に没頭するあまり、知らずのうちに、あろうことか時の長安都知事、韓愈の行列の中に突入してしまった。当然、賈島はすぐさま捕らえられ、韓愈の前に差し出されて事情を聞かれたので、詩を考えていて行列に気がつかなかったと述べた。自らも詩人であった韓愈は気になって、その詩を聞いたところ、その中に、
僧は推す月下の門
という一文があった。韓愈はこれを、
僧は敲く月下の門
と改めるべきであると言った。彼は、月夜の晩には敲く音の方が風情があるとかもっともらしい理由を述べ、いかにも自分が詩に精通しているというふうであった。
これを聞いた賈島は内心、推す音だって風情があるじゃないか、おまえに何がわかる、と反発していた。しかし、ここで逆らって韓愈の怒りを買えば、最悪死刑になるともわからないので、もっともです、あなたさまの言うとおりです、私を弟子にしてください、と精一杯韓愈を持ち上げて、難を逃れた。のち、賈島はしぶしぶ韓愈の意見を容れて、この詩を発表した。
ここから、保身のために自らが書いた文章に手を加えることを「推敲」と呼ぶようになった。
賈島のその後[編集]
とにかくその場を離れたい一心で上のようなお世辞を並べ立てた賈島であったが、これを真に受けた韓愈によって本当に弟子に召されてしまい、以降賈島は韓愈が死ぬまでこき使われ、彼の検閲を受けるはめになってしまった。韓愈の死後も、賈島は周囲から彼の弟子と目されたため、やがてこれに耐えきれなくなり、牛肉をヤケ食いし喉につまらせて死んだという。
現代の用法(例文)[編集]
漫画家[編集]
少年誌にもかかわらず、お色気シーンに定評のある漫画を描いていた作者であったが、とうとう編集者の逆鱗に触れ、原稿は大幅な推敲を余儀なくされた。
公務員[編集]
同僚の不祥事を報告するための書類を作っていたが、上司の暗黙の命令を察知したので推敲し、なかったことにした。
議員秘書[編集]
議員の指示を受けて、作成していた政治資金収支報告書を推敲し、収入を実際より少なく記載することにした。
アンサイクロペディアにおける推敲[編集]
アンサイクロペディアにおいても、推敲は非常に重要である。特に管理者に物申す場合は、推敲に推敲を重ね、相手の気分を一ミリも害しないように努めなくてはならない。すこしでも彼らの機嫌を損ねれば、君はたちまち投稿ブロックの憂き目にあうことだろう。プレビューボタンはこのためにあるといっても過言ではない。