支倉凍砂

出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
移動先: 案内検索

支倉 凍砂(はせくら いすな)とは、有能なラノベ商人である。

略歴[編集]

支倉凍砂は1982年に千葉県で生まれ、大学で物理学を学びつつ、自作ライトノベルを執筆して作家商人の地位を確立した。その売り物は自作小説とその関連商品「ウルフ・スパイス」と「マグダラ・ヒプノチス」だ。特にスパイスは大評判となり、その世界で1位をとった栄光の経歴がある。

この2つには、錬金術、権威的な教会、高圧的な騎士団という共通の要素が多数配合されている。伝説のアイテムと場所を求めて、あちこちを周るという設定も共通だ。地理空間も共通している。

2つは、いずれも交渉を主軸として展開される。商業をテーマにしているとよく言われるが、より重視されているのは商売ではなく商談のやり方だ。大きな声で元気に接客していればどんなモノでも売れるという子供だましの商売本のやり方を超え、支倉は「その場の雰囲気に合わせて強調したい売り文句を変えれば、後は放っておいても客が集まり商品は売れていく」という真の商売定石を熟知している。たとえ商品が贋作だったとしても。

支倉はヒロインを外に置いて、MAOU商会の中に入っていった。

MAOU商会で[編集]

女子禁制的職場で働く20~30代の独身男性を主な得意先とするMAOU商会の交渉役は、物凄く太った男子であった。立ち居振る舞いはギクシャクしており、地位に似合わぬ富をひょんと手に入れた新興成金であることがうかがい知れ、言葉の端々に反知性主義の片鱗がみえる。

支倉はヒロインの絵が描かれたウルフ・スパイスの商品サンプルを手に説明する。

「どうですか、狼耳ヒロインのこのイラスト、可愛らしいでしょう。この女の子は私がしがない行商や裏錬金術師をやっていた時に出会った子をモデルにして描きました。荷馬車の荷車の中に素っ裸の状態で潜んでいたのです。ケイトというその道で知られた漫画家さんが特別に用意してくれたこの絵を凝視してください。何ページにもわたって裸になっております」

相手が鼻血を出さんばかりの面持ちでしげしげとイラストを眺めている。

「それに、この女の子は変わった言葉でしゃべるのです。例えば、売り主たる貴方のことを“ぬし”と呼びます。それだけでなく、この女の子は実のところ物凄い能力を持った女の子でありまして、決めシーンでは賢い狼としての真の姿を発揮して大声でなき、周りを一瞬にして威圧してしまいます」

次の睡眠薬のマグダラ・ヒプノシスを紹介しようとしたところ、相手役は説明を聞くまでもなく、即座にOKを出した。品物を認めるので、いくらの売値が良いかと聞いてきた。支倉は自分の取り分として、1つ当たり500円の紹介料を払うよう要求した。その紹介料は同種の商品にかかる生産者の取り分としては法外に高いものだったが、イラストにすっかり魅せられていた相手役は説明を何一つ受けていない「マグダラ」まで市場の5倍の価格で引き取った。支倉の魔王の如き取引手腕だった。

バルト商会で[編集]

多大な成果を挙げた支倉は続いて、全世代に幅広い顧客基盤を持つバルト商会に足を運んだ。交渉相手となったのは、中年の女性である。

支倉はまず、両商品の元となった自作小説の特徴を説明する。

「この2つの小説は、共に中世欧州の雰囲気を基にしております。小説で中世欧州といえば英仏伊の雰囲気を背景にすることが多いですが、この自作小説では北方、つまり当商会と同じ名前の地域が主な舞台背景となっています。異教徒がすぐ隣接するところにいて、ドイツ風の騎士団が十字軍気取りで民衆を監視して威張っており、錬金術の可能性が信じられている地域となれば、どこかは分かりますね」

中年女性の目が教養ある人間を見つめる時のそれだ。

「次は商品の看板となるヒロイン2人の紹介です。さあ2人とも、入ってきてください」

2人の女助手が顔だけを露出させた状態で入ってくる。

「このようにヒロインの2人は、顔や尾に秘密があるので、某宗教のように顔だけを露出させて外を歩きます。こうした基本設定を持つヒロインはとある世界では極めて珍しいと太鼓判を押されました。当小説では、異教徒の町の代表としてカザンが登場します。カザンといえば、タタールスタン共和国の首都として栄える異教の街を連想しますね。これは異教の代表とされるあの宗教にも適応できるところを示唆しているのです」

女の交渉相手が付属資料として用意されたケイトの絵に顔をしかめる。

「それだけで全てを全否定してしまうのは幼稚な対応といえましょう。その対応は裸婦画だけをみて西欧絵画全体を全否定するのと同種の反応にございます。この自作小説および付属商品に興味を示されるのでしたら、そうしたイラストは異教の教えに従属するものではないことの証としてお受け取り下さい。作品ではヒロインが主人公を抑えつける場面も多数用意しております」

その後、商品の詳細を説明した。すると、交渉相手が口を開く。

「まあ良いだろう。バルトの地はよく雪原になる。小説や商品に萌芽する一部属性はアナ雪的魔法の力によって我が商会が希釈しておいてやろう。そのスパイスと睡眠薬を仕入れたい。本日はご苦労であった」

支倉は商人の笑顔でスパシーバした。

本心[編集]

果たして、どちらのPRの方が支倉本人の本心に近いのだろう。

支倉本人はMAOU商会とつながりの深いレーベルから自作小説を刊行している。しかし、作り上げたものを読む限り、ヒロインは主役の男に対してその自律性を認めさせているようにみえるし、MAOUの王道とされるハーレム街道の中では比較的脇道を歩んでいるように見受けられる。

だが、バルト商会のような純粋に大人たちの空間に長居することには、居心地の良さを感じていないようにも見えた。複数の言葉空間に伝わる言説を展開できることは、販路の拡大を図る商人にとって極めて大事な才能だ。

このような問いを発するのは「たわけ」にして無意味なことなのかもしれない。所詮、読者となるわっちらにとって、最も大事なことはその商品が面白いかどうかなのであって、売り主が本心で普段何を考えているかどうかは二次的な意味しか持たない。商人には商品以外の何も問わないというのは、顧客の礼儀作法だ。何かのスキャンダルに関与していたとしても、それを作品の評価に直結させてはならない。作品と人格はあくまで別のものだ。

他人の書いたノベルがあって、それを読んでいるわっちがいる。ノベルをわっちが読んで何を考え、何を表現したかだけがわっちの産物となるのであって、生の触れ合いなき凍った関係だけが支倉という「ぬし」に対するわっちの関係だ。どうやら、狼の言い草がうつってきたわっちは、その意味を認めた方なのでありんす。

関連項目[編集]

Wikipedia
ユーモア欠落症患者のために、ウィキペディア専門家気取りたちが「支倉凍砂」の項目を執筆しています。