独楽
出典: へっぽこ実験ウィキ『八百科事典(アンサイクロペディア)』
独楽(こま)とは、回転軸を中心に回転させることを目的とした玩具、およびその他もろもろの道具である。
目次 |
[編集] 構造
回転軸を中心に回転させるものはすべて独楽と呼ばれる。ただし回転させやすいよう、ほとんどのものは回転軸方向から見て円形をしており、回転軸上に重心がある。とはいえこの条件さえ満たせば立派に独楽としての機能を有するため、実にさまざまな形のものがある。
独楽の特徴として、高速で回転していれば安定するが回転が遅くなると不安定になるという点が挙げられる。これは前近代の物理学者たちの関心を引き、さまざまな考察対象ともなった。
[編集] 種類
独楽として特別に作られたものは、重心が低く傘を逆さにしたような形のものが多いが、それ以外にも以下のようなものがある。
- 傘
- 非常に扱いが容易で、手でひねってやれば簡単に回る。小学生のころに遊ばなかったかい?
- 大根・人参
- 先端部が比較的弱いため、採れたての新鮮なものを用いるとよい。また牛蒡を回転させるのは難しいことから、回転軸近傍に質量が集中しすぎているもの(細いもの)は扱いにくいことが分かっている。同様の理由で鉛筆も長時間回転させるのは難しい。
- ボール
- 回転軸がないと言われるかもしれないがそれは間違いである。球形のものは水平な地面と接している点と重心を結ぶ直線が回転軸となる。多少転がっても回転軸を確保できることから、球形のものは万能独楽と呼ばれている。
- 皿
- 独楽は基本的に回転軸が地面に接するように作られるが、そうでなくても機能を発揮する。陶器製の皿の中心を軸にテーブル上で回転を与えるとうまく回る。失敗すると掃除機が必要になるほか、お母さんから叱責が飛んでくる。
- LP盤
- これも円形であるため、テーブルの上にべったり置いて回転させようとするのは間違いである。地面と接している面積が大きすぎるために摩擦が大きくなかなか回転しない。そればかりかLP盤を痛める原因となる。LP盤の直径を回転軸として立てて回したほうがうまく回る。
- 人間
- 後述
[編集] 歴史
地球上でもっとも早く独楽を扱ったのは、ほかでもない地球である。地球は球形であるが、地軸を中心に回転しており、立派な独楽といえる。回り始めてからすでに46億年が経過しており、まだ向こう数十億年は回り続けるという。上述のボール型万能独楽の優秀性を地球自身が実証していることになっている。
人類が初めて独楽をまわした際の記録は残っていない。ただし紀元前3500年頃にはメソポタミアで車輪が使われていたらしいことが分かっており、車輪が先か独楽が先かで論争となっている。車輪は実用性に重きを置いたものであり、独楽は娯楽性の高いものである。そのため、仮に車輪が先ならメソポタミアは工業立国、独楽が先なら文化立国であった可能性が高まる。この論争にはそうした問題を含んでいるのである。
その後はオリエントを中心に世界中に広がった。手軽な玩具として農村でも受け入れられた。
一方で物理学者たちが関心を示した。中でも有名なのがコペルニクスの反論と呼ばれているものである。彼が地動説を唱えたとき、教会は「地球が回転しているなんて、自然界にそんな危なっかしい話があるものか」と厳しく非難された。そこでコペルニクスは司祭の前で独楽を回してみせ、回っているもののほうが安定であると主張したのである。しかし頭のよい司祭が独楽の上に小石を置くと、それはすぐに弾き飛ばされてしまった。司祭の「君は安定して回転している地球からいつ弾き飛ばされるんだね?」との問いにコペルニクスは答えられなかったというものである。
[編集] 日本での歴史
日本に独楽が伝わった時期は釈然としないものの、おそらく奈良時代前後ではないかと言われている。だが回せば回るという簡単なものであり、わざわざ遣唐使から伝え聞いて知るものでもない。
平安時代には専ら貴族たちの遊びとされた。鷹狩や蹴鞠のできない雨の日・風の日に室内でできる遊戯として好まれた。当時は貴族の屋敷といえど板敷きが主だったため、独楽を回すには好都合であった。藤原道長は名手として知られ、「御堂関白様は根回しも独楽回しも得手だ」と陰口された。
その後、武士や町人にも浸透していき、江戸時代には江戸城下の万屋にも並ぶようになった。安価で丈夫な玩具として庶民に親しまれ、正月の財布の紐が緩んだときに子どもに買い与える者が増えたため、独楽は正月の遊びとして定着した。
[編集] 漢字の由来
コマに独楽という漢字が当てられるようになったのは中世(鎌倉・室町時代)である。独りで楽しむ玩具だからと勘違いされそうだが、独りで神楽を行う際に用いたものであることに由来する。
神楽は本来大勢で楽器を奏で歌を歌い踊りを舞うものである。しかし訳あって一人で神楽を催したい場合には、楽器を奏で歌を歌うだけで精一杯である。そのため独楽を回して舞の代わりにしたのである。独楽は常に動いていることから舞の代用としてある程度格好がつき、また一度回したらしばらくそのままにしておいてよいことから主は音楽に専念できるという利点があった。興味のある人は自宅で再現してみてもよいが、何をやってるんだと馬鹿馬鹿しくなるだけなのでやめておいたほうが無難である。独り神楽の文化が今日まで継承されていないことからもお察し下さい。
[編集] 玩具として
独楽は玩具として世界中に存在する。簡単な構造で廉価でありかつ丈夫であることが、購入者に人気の理由である。しかし実際のところ、物が回っているのをぼーっと見ていても大して面白くない。
中世ヨーロッパでは子どもは非常に冷遇されており、子ども用の玩具は無用の長物とされた。それゆえ例外的に認められていた独楽で子ども達は夢中で遊んだ。ただし5歳くらいになると農作業を手伝わされるため、独楽で遊ぶ時間があるのは3,4歳ころまでと言える。幼い彼らにとっては手でひねって回すのが精一杯だった。
日本では江戸時代に独楽が流行したが、この頃は子どもたちにも余裕があったため、退屈な独楽を使っていかに楽しく遊ぶかという試行がなされた。独楽は手でひねって回すのが一番簡単である。しかし回転速度が遅いという問題もある。そこで子どもたちはいかに速く回転させるか、いかに難しい方法で回すかということを競うようになった。
[編集] 回し方
- 指でひねる
- とくに回転軸があるものは、それを親指と人差し指でひねって回せば簡単である。高速回転は期待できないが、熟練するとそこそこの回転速度を出すことが出来る。だがこんな単純な回し方を極めようとする物好きは滅多にいない。
- 両手のひらで回す
- 指でひねるのではなく両手のひらでひねって回す。これも高速回転は期待できないが、回っている独楽に何度も何度も回転を加えることでそこそこの回転速度を出すことが出来る。比較的大きな独楽を回すときはこのやり方が一番賢い。
- 紐を使う
- 軸に巻きつける方法と、胴体に巻きつける方法がある。どちらも練習しないとまったくお話にならない。だが練習次第で高速回転が可能。のんびり楽しむはずだった遊びが一気にスポーツらしくなる。
- 鞭を使う
- 叩かないと動かないのでひたすら叩く。移動させたければ叩く。回転速度を変えたくても叩く。叩けば言うことを聞く。ある種の性的趣向を持つものに喜ばれる回し方かもしれない。
- 機械を使う
- モーターを使う、遠心分離機を使う、マイクロガスタービンを使うといったもの。非常に高速になるほか、設定する回転軸が少しでも狂っていると独楽が勢いよく弾かれたり跳躍したりするので危険である。専用の物理実験室で精密制御しながら行う必要がある。そんな風に独楽を回してなんの得があるのかと聞いてはいけない。
[編集] ベーゴマ
さらに日本の子どもたちは回し方を競うだけでは飽き足らなくなった。そこで登場したのがベーゴマである。回し方は上述の紐を使う方法だが、2人以上が遊戯台にコマを投げあい、相手のコマを弾き飛ばすことを目的とする。自分のコマが弾き出されずに最後まで遊戯台に残った者は、弾き出されたコマを自分のものにすることができるという、一種の賭博であった。
子ども時代から賭博に興じることはけしからんとして、教師に見つかれば没収対象となった。しかし小さい頃から賭博のやり方を覚えた彼らは、のちに麻雀をする際にも抵抗が少なく、日本のサラリーマン文化の継承に大きく貢献した。また相手にコマを取られないように、各々が自分のコマを改造することで、手先の器用さを身につけた。これが日本の高いものづくり技術を維持し、戦後の復興や高度経済成長を支えたと言っても過言ではない。さらに物事に真剣に取り組む姿勢、勝つ喜びや負ける悲しみを通した豊かな感情、初心者への手加減や技術の教え合いを通した人間関係の構築など、人間形成の場ともなった。
現在は子どものベーゴマ人口も減少し、日本の技術力の低下や人間関係の希薄さが指摘されるようになった。一方で中高年の大人たちはベーゴマを思い出しては昭和ノスタルジーに浸っている。
[編集] 曲独楽
ただ回っているだけでは見ていても退屈な独楽だが、これを演芸としたものが曲独楽である。日本には三増紋也などのプロもいる。
独楽を回して刀や扇子の上を行き来させたり、あるいは投げたり整列させたりする。なかでも閉じた扇子の上で独楽を回し、その扇子を開いていく芸が人気がある。しかし2008年正月に放送された笑点ではTOKIOの山口達也もこれに成功させていることから、ちょっと練習すればできる芸であるとも言える。
中国では中国ゴマを用いた曲芸が行われている。だが中国ゴマはディアボロに近く、曲芸としてはジャグリングやヨーヨーに近い。同じ曲独楽と言ってもその違いに驚くことだろう。ちなみにこちらの芸は山口達也でも数ヶ月くらいの練習が必要と思われるが、日本にあまたいるジャグラーから見れば御茶の子さいさいである。
[編集] 様々な用途
独楽はなぜか様々な用途に用いられている。まず思いつくのが飛行手段としての利用である。となりのトトロでは、トトロが独楽に乗り夜空を飛び回るシーンが印象深い。航空力学で説明できそうでできない特別なメカニズムが働いていることが予想され、今後の解明が待たれる。
また独楽はジャイロコンパスとして、船舶の航行を助けるためにも使われている。玩具としてよりもよっぽど役に立つ利用法である。こちらは大学初級の物理学で理解できるが、計算が面倒くさいので一生のうちに二度以上理解を試みる者は稀である。
さらに教育目的でも用いられている。タイガー商会では地球ゴマを「宇宙時代の教育玩具」と銘打って大々的に販売した。回転軸が地面に対して23.4度傾斜しながら回る面白い機構を持ち、インチキな代物のように見えるが、やはり物理学で説明がつくから不思議なものである[1]。地球の自転・公転運動やジャイロコンパスの理解を助ける歴とした教育玩具であり、昭和ノスタルジーに浸りたい人、および教育熱心な人は購入を検討されたい。
なお縁日や夜店では模造品が出回っていた。宇宙ゴマや太陽ゴマといった類はすべて偽物である。くれぐれも寅さんから買ってはいけない。
[編集] 人間独楽
世の中には自分が独楽になってしまった人も存在する。代表的なのがフィギュアスケーターとバレリーナである[2]。
彼女たちは足から頭にいたる体のラインを軸に回転しており、立派な独楽である。上で牛蒡型の独楽は回しにくいと紹介したが、痩せていてもくるくると回り続けるバレリーナは優秀な独楽に分類される。
スケーターは回転速度を上げていくという恐るべき技術を持っている。一般的に独楽は摩擦や空気抵抗などによって徐々に回転速度が下がっていくものであり、あの地球ですら自転周期が長くなっている。その点、彼女たちの技術は特筆すべきものと言える。さらに一般人が真似して高速回転すると目を回すことが知られているが、安藤美姫は2000回転しても目を回さないことが明らかになっている。自分自身がくるくる回るためには、目など余計なところを回していてはいけないという独楽の極意を我々に教えていると言えよう。
[編集] 脚注
- ↑ 地面と回転軸が垂直なものは、ジャイロコンパスや地球ゴマのうち特別なものに過ぎない。そうした特別なコマは眠りゴマと呼ばれる。物理学では複雑な行列計算を行って、最後に多くの項に0を代入して解くことが出来る。それまでの不毛な計算がまるで意味がなかったかのような扱いを受けるため、脱力が襲う計算として知られる。
- ↑ スケーターには男性も存在するが、女性が得意とするため以下「彼女」とする